バイクで事故を起こし、相手にけがをさせてしまった場合には、その事故は人身事故という扱いになります。事故直後にはけが人もなくて物損事故という扱いで警察が処理した場合でも、その後に後遺症が出たりした場合には、物損事故から人身事故に切り替わる可能性もあります。

治療費は誰が払う?

人身事故を起こしてしまった場合、けが人の治療費には自賠責保険が最初に使われます。正式には自動車損害賠償責任保険というこの保険では、事故によるけが人には、治療費が120万円までが支払われます。ちなみに、相手を死亡させてしまった場合には3000万円の補償、後遺障害の場合には4000万円の補償も、この自賠責から支払われます。

この金額は決して十分な上限ではありません。実際に事故による怪我や後遺症の治療では、120万円以上かかることも少なくありません。自賠責では十分でない場合には、任意保険の対人補償で不足分がカバーされることになります。

この対人保険は任意保険となっているため、若年ライダーの中には加入していない人も少なくありません。実際、二輪バイクの任意保険加入率はわずか35%と低く、加入している人よりもしていない人の方が多いという実情。

任意保険に加入していない状態で人身事故を起こしてしまうと、けがをした人の治療費は自分のポケットマネーで負担しなければいけなくなってしまうことになります。そう考えると、補償の金額は少なくても、まったく加入していないよりは加入していたほうが、安心感が違いますよね。

行政処分もある

人身事故を起こすと、行政的な処分も受けることになります。行政処分というのは、免許停止とか免許取り消しなどの処分。一般的な交通違反の時に受ける基礎点数に、交通事故の人身事故として負荷点数が計算されることになります。点数で何点ぐらいになるのかは、けが人の治療にかかる期間によっても異なります。

例えば、よそ見運転による人身事故を起こしてしまった場合には、前方不注意による事故と判断されます。自分の過失が100%だった場合、怪我をした人が全治2週間の場合には、安全運転業務違反という基礎点数が2点、治療期間2週間という負荷点数が3点で、トータル5点が行政処分として加わります。

場合によっては刑事処分も

悪意のない人身事故の場合には、懲役や禁固、罰金などの刑事処分はあまり一般的ではありません。しかし、一般的ではないからと言って、必ず刑事処分が科せられないというわけでもありません。

人身事故の原因を作った側に対して刑事処分が科せられるかどうかは、事故当時の状況やけがの状態、怪我を負った被害者がどのぐらい刑事処罰を望んでいるかによっても異なります。この時、悪意を持って事故を起こし田と疑われる場合には、事件として警察の調査が入ることもあります。

悪意を持って事故を起こした場合でなくても、事故を起こしてパニックになったり不安になったりして、事故現場から逃げてしまうと、これはかなり悪意のある犯罪という扱いになります。「ひき逃げ」というものですね。

人身事故を起こした場合には、何よりも先にけが人の安否を確認すると同時に、救急車を呼ぶなど適切な処置をすることが大切です。もちろん、そうならないように普段からバイクの運転には慎重すぎるほどの注意を払うことも必要です。