高速道路を走行していると、路肩や道路脇に不思議なスペースが目に留まることがあります。広めに取られたその場所は、一見すると「停車しても良い場所」のように思えるかもしれませんが、実際には特定の目的に使われる場所です。今回は、そのスペースの正しい使い方や意外と知られていない役割について解説していきます。
あのスペースの正体は「非常駐車帯」
まず、高速道路脇に設けられているスペースの正式名称は「非常駐車帯」です。この場所は、故障や事故など緊急時に限り車両を停車させるために作られています。
非常駐車帯は、高速道路を走行する車の安全を確保するために重要な役割を果たしています。特に、事故や故障といった状況で停車場所がない場合、運転者が安全に退避するためのスペースとして設けられています。
非常駐車帯が設置される場所とその間隔
非常駐車帯は、道路の状況に応じて設置される間隔が異なります。たとえば、土工部や橋梁部では約500メートルごと、トンネル内では約750メートルごとに設置されているのが一般的です。この配置は、どのような場所でも迅速に避難できるように配慮されています。
ただし、このように広く設けられた非常駐車帯ですが、通常時には使用が厳しく制限されています。むやみに停車してしまうと、高速道路のルールを逸脱してしまう可能性があります。
使用が制限される理由
高速道路は車両が高速で移動する特性上、予期せぬ停車が重大な事故につながるリスクがあります。そのため、道路交通法では高速道路の本線や路肩、非常駐車帯も含めて基本的に駐停車が禁止されています。非常駐車帯も例外ではなく、「緊急時」のみ使用が認められています。
たとえば、電話に出たい、眠気が強くて仮眠したい、トイレに行きたいといった「私的な理由」での使用は認められていません。この場合、最寄りのサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、もしくは一般道へ降りることが推奨されています。
緊急時の使用と注意点
では、非常駐車帯を使用できる場面とはどのような状況なのでしょうか。それは「事故や故障などにより、走行を続けることが不可能になった場合」に限られます。このような緊急事態に備えて、非常駐車帯を正しく使用する方法を知っておくことが大切です。
非常駐車帯に停車する場合、周囲の安全を確保するための注意が必要です。特に、後続車から追突される危険性があるため、以下の手順を守るようにしましょう:
- ハザードランプを点灯する
停止中の車両があることを後続車に知らせるため、必ずハザードランプを使用します。これにより、後続車が十分な距離を取ることができます。 - 発炎筒や三角表示板を設置する
車両の後方に発炎筒や三角表示板を置くことで、夜間や視界の悪い条件でも存在を示すことが可能です。 - 車両から離れ、安全な場所へ避難する
停車後は速やかに車両から離れ、ガードレールの外側など安全な場所で待機するようにします。特に夜間や天候不良時には、車内にとどまらず避難することが重要です。 - 道路緊急ダイヤルに通報する
停車後は、高速道路に設置されている非常電話や携帯電話を使い、道路緊急ダイヤル(#9910)または110番に連絡してください。
非常駐車帯での不適切な利用のリスク
残念ながら、非常駐車帯の本来の目的を理解せず、不適切に利用するケースが少なくありません。中には「スマートフォンを操作するため」「短時間の仮眠を取るため」に停車する人もいます。しかし、これらは重大な事故を引き起こす原因になりかねません。
非常駐車帯に停車することで、後続車の追突や渋滞を引き起こすリスクが高まります。特に、停車車両のテールランプが走行中の車両のものと見間違えられるケースがあり、これが原因で発生した事故の報告もあります。
高速道路利用者が知っておくべきこと
高速道路を安全に利用するためには、非常駐車帯の正しい使い方を知るだけでなく、停車する際のリスクも十分に理解することが必要です。緊急時に備えて、非常駐車帯がどこにあるのか、利用方法はどうするべきかを事前に確認しておくことが、事故やトラブルを未然に防ぐポイントです。
また、高速道路を利用する際は、定期的に休憩を取り、トイレや眠気対策などをサービスエリアやパーキングエリアで行うことを心がけましょう。これが、安全で快適なドライブにつながります。
非常駐車帯は、いざというときに頼れる場所ですが、その利用には厳格なルールがあります。私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、ルールを守ることで、高速道路の安全性を維持することができます。次回、高速道路を利用する際には、非常駐車帯の存在意義を改めて意識してみてはいかがでしょうか。